大学へと向かう途中、というよりも、家から出てすぐに、
救急車のサイレンが聞こえてきた。 ドップラー効果を耳に
残しながらすぐに聞こえなくなると思っていたのだが、
予想に反し、曲がり角から救急車が現れた。
ふと、俺の歩く道路の端を見てみると、嗚咽を上げる
女性が、二人立っていた。 そのすぐ足元、乾き切った
粘土のような顔をして、路肩にサラリーマンが転がっていた。
「大丈夫ですか?」などと救急隊員が話し掛ける中、
一応返事が返せはしたが、芳しくない様子だった。
大学が終わって帰り道。
想像とは違って、通夜は行なわれていなかった。
多分大事に至らなかったのだろう。 この話をした時、
友人は「無事を祈る」と言っていたが、俺はただ、
「死」というものに恐怖を感じただけだった。
ただそれだけの話。
この話の続きは、その内書くかも知れない。
書かないかも
知れない。 どちらにしても詮無き事だが、怖い怖い。
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